ちょこっと歳時記 炉の名残り
- 裏千家茶道教室 佳辰
- 2024年4月29日
- 読了時間: 1分
裏千家の四月といえば、透木釜です。
炉一杯になるほどの大きい羽釜を掛けることで炉中の火を隠し、
茶室の温度を上げないように、
見た目にもお客さんから火を遠ざける心遣いとして、五月からの風炉の一歩点前の位置付けとなっています。
他の趣向や季節感との兼ね合いから、現在はあまり意識されませんが、
四月は炉の名残りの季節となります。
そもそも、茶人にとっての名残りとは、
前年十一月に封を切った茶壺の中の葉茶が残り少なくなることを指し、
この茶壺の中の葉茶を必要な分取り出して、石臼で引いて粉末にしたものがいわゆる抹茶となります。
現在は保存技術や密閉技術が進化し、通年新鮮な抹茶をいただくことができますが、
実際に茶壺で葉茶を保管していた頃は四月は茶壺の中の葉茶は半分となり、
茶の精気も弱くなりつつある頃です。
来たる風炉の時期に
「濃茶を練る前に釜に水を差す」
という手続きが習いとしてあるのはこのためです。
炉を塞ぐ前の透木釜の姿は、
「散るを惜しまぬ人やある」の通り、
花を惜しみ炉を惜しみ、名残りの季節特有の淋しさを味わうのにぴったりだと思います。
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